常駐軍駐屯地から、都へ。オリオールと名乗った男とタカハシは、夜に暮れた草地に細く伸びた道筋を、然して急ぐでもなく歩いていく。
「まず、道順について話しておこうか」
タカハシから数歩前を歩いていたオリオールは、振り返る事無く説明を始める。
「ランドリートの都からラースナウアの街へと向かうルートは、大きく分けて二つある。アンタア東街道から向かうルートと、オーンアム南街道から向かうルートの二つだ。本来なら、ランドリートを包む外環四街道をそのまま進んでいけばラースナウアに着くらしいんだが、今はまぁ、それどころじゃないらしくてね」
笑いでも堪えているのか、オリオールの肩が小さく揺れた。
「アンタアから廻る場合は、希望の平原からポリツェルッツェンの村を北に抜けて、そこから巨岩の荒野を経由してオータの河を渡ればラースナウアに着く。オーンアムから廻る場合は、途中で島中央の山岳に入り、オーンアム間道を通ってマルダの村へと移動する。そこから山中公路を通って北へ向かえばラースナウアに着く。どちらもかなり危険らしいが……どちらかといえばオーンアム南街道からのルートを使った方が楽らしいね」
(楽、か)
タカハシは、オリオールの言葉に軽く首を傾げる。四つあるフローリアの大島のうち、最も安全であるとされるのがこのランドリートの島だという。ならば、どのルートを通ったところで楽なことには変わりないのではないか。
タカハシがそう尋ねると、オリオールは唐突に立ち止まって、じっと前方を見据えた後、軽く嘆息。そして疲れの混じった声音で続けた。
「本来ならば安全らしいんだが……聞いたところによると、このランドリートの島でも鬼種や亜獣の動きが活発になってるっていう話でね。かなり治安が悪くなっているらしい。ほら、その証拠に──」
そこでオリオールは言葉を切り、自分達が歩いていた道の先を示す。そこには、タカハシ達の姿を見つけ、『獲物』を狩るために動き出した凶暴な獣の姿があった。
「都の近くでも、こういう類の獣がでるようになってる。島の奥地の方じゃどうなってるか、想像するだけで憂鬱になるね」
確かに彼の言う通り、この島はもう安全な場所ではなくなっているらしい。
タカハシとオリオールは武器を構え、襲い掛かってくる獣と相対する!
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